送る


当初掲載日:2017.10.18、最終更新日:2017.12.09

A.送風係

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ミツバチ、蜜蜂、送風係、菜の花
都城、2013.04.21(Sun)、13:14 Canon EOS KissX50 EF70-200mm F4L IS USM 127mm F4 1/1000秒 ISO100

①春の午後送風係ひとり五分 次に見たきは夏の光景 2017.10.18

 

  撮影当初(2013年4月)に詠んだ短歌です。「送風係」は、入口の上の方で下を向いて盛んに羽を振っている一匹のミツバチです(その後、実は見間違いであることに気付きました。④で触れています)。時間を図ってみると、送風は5分間で止めました。

 この時は春の午後で送風係は一匹でしたが、夏になれば何匹で何分交代なのだろうかと興味が沸きました。

②裏山に菜の花咲けり交代で巣箱に風を送るミツバチ  2017.10.18

 

 2017年11月の歌会の詠草として、①の短歌を推敲して提出しようと思いました。前回の歌会での指摘を踏まえて②のように詠みました。工夫した点は次の2つです。

  • 詠嘆の「かな」は古い →結句の詠嘆は、俵万智さんの創作である「動詞+体言止め」による詠嘆にしてみました。尤も、俵万智さんのは「二音の動詞+五音の体言止め」、私のは「三音の動詞+四音の体言止め」ですが。
  • 体言止めは一つにする →歌会での指摘ではありませんが、俵さんの著書に書いてありました。撮影当初の①の短歌は体言止めが三つもありました。
写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ミツバチ、蜜蜂、送風係、菜の花
都城、2013.04.21(Sun)、13:14 Canon EOS KissX50 EF70-200mm F4L IS USM 127mm F4 1/1000秒 ISO100

 ③裏山に菜の花咲けり交代での中に風送るミツバチ 2017.10.20追記(最終更新10.28)

 

 ②の短歌を11月詠草として送ったものの、「巣箱に風を送るミツバチ」は、ちょっと気になっていました。「風送る」としたかったのです。ただ、単純に「を」を省くのでは四句が字足らずになってしまいます。すると、風を送るのは「巣箱」というより「巣の中」だと気付きました。「巣箱」では巣箱の外側も含まれてしまいますので、「巣の中に風送るミツバチ」とすればいいことに気付きました。これを詠草として修正提出しました。

 

 なお、結句の動詞は句跨りにしたかったのですが、「巣の中に風送るミツバチ」の場合、句跨りと言えるのかどうか。

 宮崎市のオルブライトホールで10月21日に開催された「和歌文学会第63回大会」の基調講演において伊藤先生が言及された、牧水・短歌甲子園の「鳥はいつ自分が飛べると知るのだろう屋上に踏み込む時の風」(福岡女学院の神野優奈さんの作品。俵万智さんもtwitterで紹介されています)は完璧な句跨りですが、それに比べて私の「巣の中に風送るミツバチ」は、「送風」という言葉があるとは言え、「句跨りの雰囲気は感じられる」という程度でしょうか。次回歌会で訊いてみたいです。

 尤も、句跨りになりさえすればいいという訳ではなく、一首全体での出来はどうかということに尽きるのですが。

 また、次回歌会では短歌を短冊に書いて提供するようにとの指示がありました。場所を借りている会場(中央公民館)の年1回の祭りに作品を掲示するためです。私は③の短歌を短冊にしました。

 落款というものを初めて作りました。「ミツバチ」の文字の下に押印しています。注文後にネットで調べて分かったことは、短歌の場合、姓名印は白文(文字は白色)、雅号印は朱文(文字は朱色)にするという説があり、私が注文した雅号印は逆に白文にしてしまいました。

2017.12.09追記

 

 中央公民館祭りは11月25日(土)~26日(日)に開催されました。25日の夜は、中央公民館に隣接するホテルでの同窓会に出席することにしていたので、早目に家を出て公民館に行ってみました。

 すると、心の花宮崎歌会の短冊は26点あり、落款を使っていたのは私だけでした。

 左隣にはアララギ宮崎歌会の短冊が16点ありました。こちらは豪華な短冊が目立ちましたが、それでも短冊の使用者は同じく一人だけでした。

 なお、私の短冊(写真の右から2番目)の右の1枚と左の4枚の短冊の作者には、12月5日(火)の歌会の場でネット掲載の承諾を得ました。

④裏山軽業師棲む同僚にぶら下がり風送るミツバチ 2017.10.20(最終更新10.28)

 

 写真を拡大して良く良く見ると、巣箱の空洞の前で羽を盛んに振っている送風係の真上に、黄色の大きい蜜を両脇に付けたミツバチがいて、そのミツバチにぶら下がって送風係が羽を振っているではありませんか。画像をクリックして拡大表示して見てください。撮ってから4年間、気付きませんでした。先入観念で見ていました。

 この体勢なら、巣箱の入口の空洞を最大限に活かして風を送ることができそうです。そこで、「裏山に知恵者の棲めり曲芸の体勢で風送るミツバチ」「春の日に二匹働く曲芸の体勢で風送るミツバチ」などと詠んでみましたが、最終的に④のように詠みました。二匹は協力しているのか、それとも上の一匹は送風係に掴まえられて逃げようと必死なのか、分かりませんね。

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ミツバチ、蜜蜂、送風係、菜の花
都城、2013.04.21(Sun)、13:14 Canon EOS KissX50 EF70-200mm F4L IS USM 127mm F4 1/1000秒 ISO100

  ただし、④の短歌は、この拡大写真に付けた短歌つまり写真短歌でないと、この情景を理解してもらえず、歌会での得票は難しいでしょう。それだけでなく、③の方が短歌としての広がりがある(④は、トリミングしただけに狭い)と思います。

 そのため、歌会に提出する詠草は③のままとしました。

2017.11.05追記

 さて、歌会当日(11月4日)、③の短歌は得票できませんでした。二次会での指摘は以下の2点でした。

 ①上の句と下の句の繋がりが分からない。

 ②なぜ裏山なのか。

 

 ①については、菜の花が咲いているということで、宮崎なら季節は3月から4月と分かります。その時期は、春になって花が咲き、ミツバチ達が活発に密を集めているということです。やがて5月頃に始まる分蜂(詳細は次のB.父のペット)を控えて、巣箱の中は密集したハチで一杯になります。

 そのため、夏ほどではないにせよ、撮影した4月の午後なら、巣箱の中は暑くなっているはずです。そういう季節であることを①の短歌のような言葉で説明するのではなく、③のように描写することで分かってもらいたい、いや分かってくれる人がいるに違いないと思ったのです。

 次に②の「なぜ裏山なのか」。西洋ミツバチの養蜂業者(大抵は大手業者)は、桜前線という言葉があるように、開花に合わせて巣箱をトラックで南から北に運んで採蜜すると、私は理解しています。それだけでなく、越冬するために南下してくるようです。来年また北上するには南下しておく必要があるとも言えます。その場合、トラックが行けないような山には巣箱を設置できません。

 しかし、地場の養蜂業者(主に日本ミツバチ)は、巣箱を移動させる必要はありません。効率を優先して大量に年何回も採蜜する大手業者とは違います。ミツバチは広葉樹にできる虚(ウロ)に分蜂することが多いので、生育環境としては山間が適しているでしょう。そのため、平地ではなく山間に巣箱を設置している訳です。山といっても、ミツバチが飛んで行ける範囲内に充分な花が咲いていることが前提ですが。

 これで「裏山」のうち「山」については理解してもらえたと思います。次に「裏山」のうち「裏」については、父が裏山に趣味で巣箱を設置しているからでした。この点は、連作として読まないと理解できないかも知れません。それは私が気付きませんでした。


B.父のペット   2017.10.22

写真短歌、写短、フォト短歌、ペット、ミツバチ、蜜蜂、蜂蜜
自宅、2009.11.05(Thur)、18:55、Nikon COOLPIX P80、5mm F3.8 1/60秒 ISO322

 私の父は、養蜂業者ではないのですが、ミツバチを飼うのが趣味です。ペットはミツバチという訳です。上の「送風係」も、実家に帰って裏山に撮りに行って偶然見付けた光景です。

 春になると、裏山に巣箱を用意し、分蜂した蜜蜂(注)が木に下がっているのを見付けては箱の中に招き入れるのです。

 それだけなら楽しそうです。しかし、スズメバチなどがミツバチを襲うので、父はミツバチを守るために強敵のハチと戦っているのです。

 巣箱の近くでスズメバチを見付けると、スズメバチを捕まえ、目印のための紐を付けて放します。そして、紐を付けられたスズメバチを追いかけることで巣を突き止め、その巣のハチを全滅させるのです。私は怖くて見たことがありません。

 

(注)分蜂の様子が桑畑純一著『ミツバチが危ない 孫が危ない』(みやざき文庫、2013年刊、P.81~82)に書いてありますので紹介します。

 

 女王が約半分の仲間を引き連れて巣から出て行く一大事業は、実は働きバチが旧女王に出て行くことを催促するらしい。新しい女王が生まれる4~6日前に巣を出るとされている。新しい棲み処を見付けるのも働きバチの仕事である。棲み処探しは経験がものを言うが、日齢の高い蜂が営巣場所の探索にあたると言われている。

 行き先の候補地がいくつかあがると、満場一致の原理の完璧な採用により、決定される。この行動は、分蜂して次なる棲み処を探すため、蜂球でぶら下がっているときに、探索バチが尻振りダンスで表現していることで確認されている。ただ一つの情報が支配的になったとき、全体は中継地を引き払って新居へ飛び立つ。

 つまり、一致を見るまで、投票を何度でも続けるという。ローマ法王の選挙がこの前あったが、ミツバチと同じように何回も投票を繰り返し、満場一致で法王を選ぶという報道があった。ミツバチは人間より何万年も前に、このような満場一致の原理を見いだしていたのである。

 そのような苦労の末に、父はミツバチから蜂蜜を頂戴し、私は御裾分けに預かっているという訳です。多い時は巣箱が7個あったとか。でも、全ての箱が空っぽ、ミツバチがいなくなった、という時もありました。

 今年90歳になる父の趣味が、この先もずっと続くよう、願う日々です。


C.ゴーヤ   2017.10.22

写真短歌、写短、フォト短歌、ゴーヤ、苦瓜
自宅、2009.09.02(Wed)、18:55、Nikon COOLPIX P80、6mm F3.2 1/11秒 ISO64

 

 2009年に写真短歌を始めた当時はNHK短歌に投稿していました。しかし、通常の短歌と写真短歌の短歌は少し違うということが分かり、短歌投稿は止めました。

 上のAの「③裏山軽業師棲む同僚にぶら下がり風送るミツバチ」のように写真があって初めて短歌が理解できる、或いは写真短歌では見れば分かることを詠むと短歌が写真の説明になってしまうので、それを避けて詠むと、短歌だけを切り離した場合に何のことか理解できない、ということになるからです。