次の最初の2コマは、『写真短歌エッセイ あじさい通信』(初版ではpp.84~85。第2版ではpp.54~55)で取り上げましたが、2コマ目までに8年を要しました。
さらに2年待った2021年の夏に3コマ目と4コマ目を撮りましたので、それらの10年間を4コマで紹介します。
地上に出てきたセミは、木の枝を素早く駆け上り、葉っぱの裏側にしがみついて羽化します。葉っぱの裏に隠れることで、羽化してから翌日に飛び立てるようになるまでの、最も無防備な状態で外敵に見付かるリスクを減らそうとしているのでしょう。
1コマ目の空蝉(うつせみ。セミの抜け殻)は、木の枝が剪定されていることが分からずに駆け上ってきて、そのまま羽化したことを物語っています。それは、「引き返そうとは思わなかった」ということでもあります。
そこで、引き返そうとした形跡のある空蝉を探すことにしました、すると、8年後に見付けることができました。それが次のコマです。
逆さになって羽化していることが「引き返そうとした形跡」と考えていますが、いかがでしょうか。
けれども、遺伝子が許してくれなかったことを物語っています。仮に引き返して別の枝を選んでも同じ状況に陥り、時間を浪費する可能性が高いと思われます。そのため、その場所で羽化した方がよいことを遺伝子が教えているのでしょう。
それから2年待った2021年の夏、次の3コマ目の空蝉を見付けました。
しかし、その夜に九州に上陸した台風9号の影響で、翌日には空蝉は見当たらなくなっていました。そのことによって、2枚の葉っぱにつかまって羽化した状況が推測できました。
2枚の葉っぱにつかまった状態では、自分の体の重みで不安定になり、進みづらくなったことでしょう。そこで、進むことをやめ、その場で羽化することを決意したのでしょうね。