鵜戸の楽園(ツマベニチョウ編)


A.ツマベニチョウの番(つがい)

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ツマベニチョウ、鵜戸、日南市宮浦
旧鵜戸小前のハウス内、2015.04.11(Sat)、10:06、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F2.8 1/5000秒 ISO100

 鬼束さんは、「チョウに遊んでもらっている」と言われます。この時は、ツマベニチョウの番が帽子に止まりました。左がオス、右がメスです。

 ここで疑問点が1つ。一般的に、オスがメスにアピールするために、孔雀の羽、鶏のトサカ、鹿の角のように、きらびやかに飾っているのはオスなのに、なぜツマベニチョウのメスはオスにない斑点を持っているのだろうかという点です。アピールするのはメスなのでしょうか。

2018.01.09追記

 なぜツマベニチョウのメスはオスにない斑点を持っているのだろうか」。私が抱いた3年前の疑問の答えが見付かりました。ネットで注文していた日高敏隆著『生きものの世界への疑問』(朝日文庫)を今朝コンビニで受け取り、始業前に読み始めたところ、最初の項目「昼のチョウの存在について」の2ページ目に次のように書いてありました。

  • チョウは昼の光の中で生きるので、生活のほとんどすべてを光にたよっている。まず彼らは、目で花を探す。花の色、それにいくぶんかはその形、ただし輪郭ではなくて、その立体的な構造が、彼らに「花」の存在を告げる。
  • 彼らは異性も目で探す。雌の放つ特殊な匂いに魅かれて雌をみつけだすガとちがって、チョウは雌の姿、その色や色のパターンを手がかりとして、ガールハントする。チョウはきわめて人間と似ているのだ。

 なお、この本の同じ項目の中に、なぜチョウはヒラヒラ舞うのかも書いてありました。興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。


B.ツマベニチョウの卵

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、魚木、ツマベニチョウ、卵、鵜戸、日南市宮浦
旧鵜戸小前のハウス内、2015.04.11(Sat)、10:55、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F5 1/125秒 ISO100

 

 魚木(ぎょぼく)の葉に産み付けられたツマベニチョウの卵です。ツマベニチョウは魚木の葉を食草とします。


C.ツマベニチョウの幼虫

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、魚木、ツマベニチョウ、幼虫、鵜戸、日南市宮浦
旧鵜戸小前のハウス内、2015.12.19(Sat)、11:25、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F2.8 1/320秒 +0.3EV ISO100

 

 ツマベニチョウの幼虫は、アサギマダラと違って、じーっとしていて、なかなか動きません。

 何回も通って、この日も1時間ぐらい待ってようやく、葉柄(葉っぱの枝に近い方の部位)から先端に向かって動き出しました。葉を少しかじって元の所に戻って行きました。

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、魚木、ツマベニチョウ、幼虫、鵜戸、日南市宮浦
旧鵜戸小前のハウス内、2014.12.21(Sun)、10:05 Canon EOS 70D 、SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM 35mm F2 1 /800秒 ISO100

 

 葉柄川にじーっとしていて、なかなか動きません。


D.ツマベニチョウの蛹

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ツマベニチョウ、蛹、鵜戸、日南市宮浦
日南市宮浦の長友邸、2016.02.11(Thur)、11:18、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F3.2 1/250秒 ISO1600

 

 鬼束さんが長友さんを紹介してくださいました。お二人は、鵜戸の活性化に取り組んで多彩な活動をされていることが宮崎日日新聞に掲載されました(2014年9月13日)。

 さて、ツマベニチョウの蛹は、花籠のどこにいるでしょうか。丸に十の字の形の車輪の第1象限にいます。

 


E1.羽化を待つツマベニチョウ(個体A)

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ツマベニチョウ、蛹、羽化
自宅、2016.03.12(Sat)、10:22、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F4 1/125秒 ISO800

 

 2016年3月5日、長友さんからツマベニチョウの蛹を頂いて、自宅に連れて行きました。

 蜜の豊富なマーガレットをエサとして用意していたことが写真の背景処理に役立ちました。嬉しい誤算でした。


E2.羽化直前のツマベニチョウ(個体A)

 

 三寒四温は慣用句。「仕事をやめてから歌を始めた男性に最も多い弊害が慣用句の多様」(『作歌のヒント』、P109)。

 日高敏隆著『春の数え方』(P220~221)に、三寒四温について「積算」という以下の≪≫で示す記述がありましたので、「積算」と組み合わせて使うなら良いと考えて使ってみました。尤も、私は「積分」と記憶違いしていました。

 

 生き物たちは、この揺れ動く気温の毎日、毎日に反応するのでなく、それを積算しているというのだ。

 それもただの積算ではない。ある一定温度より低い、極端に寒い日には、その温度は数えない。この一定温度は発育限界温度と呼ばれている。≫

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ツマベニチョウ、蛹、羽化
自宅、2016.03.27(Sun)、11:23、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F3.2 1/125秒 ISO200


E3.羽化直後のツマベニチョウ(個体A)

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ツマベニチョウ、蛹、羽化
自宅、2016.03.27(Sun)、16:50、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F2.8 1/100秒 ISO200

 

  自宅でG2の写真を撮り、隣の部屋で昼食を終えて直ぐに様子を見に戻ると、畳に黄緑の液体が落ちていました。「羽化は夜」と聞いていたので、休日の昼の羽化という、めったにないチャンスを活かすことができませんでした。

 恐らく、蛹のいる部屋で夜遅くまで用事があってライトを点けていたので、体内時計を狂わせてしまったのでしょう。


F1.羽化前夜のツマベニチョウ(個体B)

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自宅、2016.03.28(Mon)、23:17、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F4 1/13秒 ISO800

 

 花籠を置いた部屋で夜遅くまで別の用事をしていた時、うっかり蛹に物を当て片方の糸を切ってしまいました。

 そこで、残った方の糸を花籠から切り離し、枯葉を敷き、その上に蛹を置きました。無事に羽化することを祈りながら。


F2.羽化直後のツマベニチョウ(個体B)

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ツマベニチョウ、蛹、羽化
自宅、2016.03.29(Tues)、20:29、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F4 1/6秒 ISO800

 

 夜に帰宅すると、無事に羽化し、ビン挿しのマーガレットの茎につかまっていました。この個体も羽化は昼だったかも知れません。籠の底には、滑り止めになるようハンカチを敷いていましたので、羽を伸ばす場所まで歩いて行けたのでしょう。

 蜜を吸うことを想定して置いたマーガレットでしたが、それにつかまって羽を伸ばすことは想定外でした。それにしても、ツルツルのビンをよくぞよじ上ったものだと思いました。私が傷つけてしまった個体だけに、翌朝放蝶できて安堵しました。


G1.羽化用の空間を作る(個体C)

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自宅、2016.04.02(Sat)、14:32、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F4 1/10秒 ISO200

 

 個体Bの羽化後の動き(F2)を踏まえ、個体Cには羽化後に羽を伸ばせるだけの空間を作りました


G2.脱け殻を見つめる(個体C)

 4月3日(Sun)は用事があって未明に出かけ、高速バスの最終便で帰宅したのは4日(Mon)の午前2時少し前でした。すると、羽化していて、空間を創った甲斐あって抜け殻に掴っていました。

 最後の個体を撮るために鉢を籠から出そうとすると、彼(その後放蝶する時にオスと判明)は籠の底に落ちてしまいました。そこで鉢を籠に戻すと、鉢をよじ登りました。

 しばらくして鉢を籠から出すと、彼は自分の抜け殻を見詰めているようでした。「羽を伸ばす場所はここでもいいや」と思ったのでしょうか。

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自宅、2016.04.04(Mon)、01:58、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F8 0.6秒 -1EV ISO800


G3.もう一泊いかが?(個体C)

写真短歌、フォト短歌、写短、紫陽花法師、ツマベニチョウ、蛹、羽化
自宅、2016.04.04(Mon)、02:05、Canon EOS 70D 、Canon EF100mm F2.8L マクロ IS USM 100mm F2.8 1/25秒 ISO800

 

 個体AとBは羽化の翌朝には放蝶しましたが、個体Cの場合は雨が降っていたため、もう一泊必要だろうと、朝の出勤時には放蝶しませんでした。

 しかし、昼間は晴れていて、帰宅した時は明るかったので、もう一泊は勧めず、放蝶しました。その時に、オスであることが分かりました。

 残念ながら、羽化の瞬間や飛び立つ瞬間は撮ることができませんでした。

 こうして一ヶ月に及ぶツマベニチョウと私の家族との初同居は終わりました。長友さんは、ハウスでなく自宅の部屋で育てたアサギマダラとツマベニチョウを1シーズンで200頭(注1)も解き放ったことがあるそうです。

 そのような放蝶の瞬間をいつか撮りたいと思っています。2017年6月に鬼束さんの奥さんから電話を頂きましたが、あいにく県外にいてチャンスを逃しました。

 

(注1)蝶の数え方

蝶は「匹」と数えると思っていましたが、「頭(とう)」と数えるのだそうです。ただし、headの誤訳ではないかとの説もあるようです。


 成蝶が羽を広げた時に背中側に見える模様(写真A)が、羽化の前(E2、F1)には見られても、羽化直後には羽をたたんでいるために(3、F2、G3)、見ることはできません。

 ここで不思議に思うのは、蛹の状態(E2、F1)で背中の模様が見えるのは何故かということ。分かったのは、蛹の状態で羽の中央を2つに折り曲げて育つということ。特に写真E3とG3が明瞭で、羽の中央に縦のラインが見えることが根拠です。

 楽しい遊びを教えて頂いた鬼束さん、長友さん、ありがとうございました。