シリーズ01:瞬間

(B04b)正体を見せる瞬間(後編)

 2020.07.22配信  前編はこちら

 雨が降って地面に水が溜まることで蝶の生存が危うくなります。

 そこで、軒下の縁側に、強風でも倒れない大きな鉢を置いて、その中に葉っぱを敷いて石で固定し、蝶を移せば良いと思いました。

 翌30日の降水確率は0%なので、翌日実行することにしました。蝶のベッド造りは3回目。しかし、ベッドは今回初めて外に置くので、これまでとは違います。設計図は次のとおり。

 屋根の下に置いた鉢が雨で濡れても水が溜まらないように、植木鉢の土を少し小石に入れ替え、その上にメッシュ状の布を敷き詰めます。さらに葉っぱを置いて重石で固定します。

 

 そして迎えた次の日の朝、ほぼ設計図どおりに造りました。9時半頃、蝶を1頭ずつ、つまんで移す時、危険を察知したのか、地面に残っている蝶の1頭が翅(はね)を拡げて少し動きました。その瞬間、背中のムラサキが見え、ムラサキツバメに間違いなかったと確信しました。

 まだ寒いためでしょう、移す時に一瞬動いただけで、その後は皆さん、横になって眠っていました。

自宅、2018.12.30(日)、09:33 OLYMPUS Tough TG-5  8mm F2.9 1/60秒 +0.7EV ISO800
自宅、2018.12.30(日)、09:33 OLYMPUS Tough TG-5 8mm F2.9 1/60秒 +0.7EV ISO800

 それから1時間ぐらい経って縁側の鉢を見ると、1頭しか残っていませんでした。縁側に日が射して温かくなり、4頭は飛び立って行ったようです。

自宅、2018.12.30(日)、10:40 OLYMPUS Tough TG-5  13mm F4.2 1/40秒 +0.7EV ISO1600
自宅、2018.12.30(日)、10:40 OLYMPUS Tough TG-5 13mm F4.2 1/40秒 +0.7EV ISO1600

 

 次の写真は、9年前に撮った1頭のムラサキツバメです。当時は蝶の名前も、成虫のまま越冬できるということも知りませんでした。その後に巡り合った5頭の世話をすることができたのは、偏に日南市鵜戸の鬼束達朗さんと長友治さんのお陰です。

自宅、2009.12.12(土)、10:21 COOLPIX P80  25mm F6.3 1/273秒 ISO64
自宅、2009.12.12(土)、10:21 COOLPIX P80  25mm F6.3 1/273秒 ISO64

  なお、この短歌は1首に動詞を5つも使っています。「1首に動詞は3つまで」というのは、俵万智著『考える短歌』(新潮新書)に書いてあり、この蝶に出会う半年前に読んでいました。しかし、1首に動詞は3つまで」を鉄則のように意識したのは、日向市で開催される「牧水・短歌甲子園」を聴講した2017年のことでした。